フロント商品の価格戦略
価格戦略と聞くと、マーケティングの4Pを思い浮かべる方がいらっしゃるのかもしれません。
そもそもの価格戦略の意義とは、業務やサービスの価格を決める際に、損益分岐点に基づく利益計画のためにあります。
この価格戦略をフロントエンド商品に適応することは、あまり賢い選択ではありません。なぜなら、フロントエンド商品とバックエンド商品はセットで考えるべきものですので、フロント商品が売れても「儲からない」のは当たり前だということです。
「フロント商品」という言葉になじみがない方もいらっしゃると思いますが、これは本書でも記載しているとおり、集客のためのサービスを指し、これは社会保険労務士業界特有の言葉ではありません。詳しい説明はここでは割愛しますが、世の中の多くのサービスがこのような戦術を取っていますので、参考書籍をお読みになることをお勧めします。
さて、フロントエリアの受注可能エリアの図をもう一度見てみましょう。受注エリアは「早い」「安い」「お得」という牛丼のようなキーワードでの表現がピッタリです。
「安ければ良いのか?それとも、早ければ良いのか?」という極端な視点は一度脇に置いておき、企業の視点に立ってみると、どのような戦略を立てるのがベストかが見えてきます。
今の時世において企業の社労士ニーズは以下のような状況です。
- 顧問契約など論外。固定費を可能な限り排除したい(本書52ページ参照)
- 無料面談で情報を収集し、インターネットで調べよう(本書23ページ参照)
- 複数の社労士で相見積もりを取って下限価格で依頼しよう
いかがですか?頭にきますよね。私はこのような風潮に立腹しています。業界自体がこのような評価のために、如何に素晴らしいサービスを準備しても、まず企業の啓蒙をしなければならないケースが多いために営業を苦労することになってしまいます。ただ、これはこれまでに多くの社労士の先生方が「適当に」価格設定をしてきたことも要因の一つだと考えています。
分かりやすい例でいえば、テレビを購入しようと思い、複数の家電量販店をチェックしたところ、ある店舗のみ他店よりも2倍近く高額で販売されていたら、もちろん購入しませんよね。しかも、それどころではなく、当分の間その店舗のことは「見る価値も無い」と立ち寄ることもないでしょう。
もし、企業に営業した際に「高い」と言われる場合、2つのケースが考えられます。ひとつは「企業が業務価値を理解していない場合」そしてもう一つは「本当に高い場合」です。後者は業界の信用自体を落としかねないので、価値に見合った適正価格にしなければなりません。
さて、右の図をご覧ください。
集客しやすいフロントエンド商品を販売し、クライアントにバックエンド商品を販売する一連の流れにおいて、「アップセル率」を計測していらっしゃいますか?当然母数が少ないうちは信用性に掛けますが、ある程度の数があれば非常に効率の良い営業と、売りやすい価格戦略を打ち立てることができます。
フロント商品で準備されたサービスが一社に導入した際の利益はどのくらいかをまず計算してみてください。
次に、今までの「アップセル率」を踏まえてバックエンド商品でも同様の値を算出してみましょう。
場合によってはフロント商品は売れば売るほど「赤字」ということもあり得ます。これは悪しきことではなく、フロント商品の利益を限りなくゼロに近づけることも、一つの戦略です。つまり、アップセル率が高い数値の場合は、フロント商品は「数を売る」ことに注力すべきだということです。
逆にフロント商品でそこそこの利益が発生し「アップセル率」が低い場合、それは事務所の「のびしろ」が少ないことを意味しています。さらにそのフロント商品自体の受注率が低い場合、早急にサービスのラインナップを見直す必要があり、対処に遅れると「死に体」になる恐れがありますのでご注意ください。
◆まとめ
サービスの価格戦略は「思いつき」や「隣の社労士マイナス3000円」などという決め方をしてはいけない。
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