本書では、ブランドを手っ取り早く作るための「ブランディング」という言葉が現れ、本質ではない点をあたかも「強み」のように打ち出すことのリスクについて述べました。
まず、はじめにブランドができる要素を考えてみると以下のとおりです。
- 実績(歴史)
- ユーザーに与える価値
これ以外にブランド構築の要素はありえません。
この活動によってブランドが育つことで「口コミ」が生まれ、ユーザー自身が利用することでのステータスを感じる、これがブランド構築の正しいストーリーだといえるでしょう。
また、この口コミのレベルも、最初は限られたエリア、例えば「株式会社Aの取引先や経営者の知人の間では」というレベルで大丈夫です。それが市・区に広がり、県へと拡大していくものです。
あだ名のような肩書きを付けて、成してもいない実績を列挙する。
これは、ブランド構築の要素を無視し、強引に口コミを起こそうとする事に他なりません。
このような活動の末に生まれるものは何でしょうか。
最初は、成り立つのかもしれませんが、まるで厚化粧で塗り固めた顔のように、すぐにつじつまが合わなくなってくるのは無いでしょうか。
社会保険労務士は法律家であり実務家です。
そして、コンサルタントとしての側面も持っております。
法遵守の精神を持ち合わせながら、性急で場当たり的なブランド構築をすべきでないのは言うまでもありません。
それでは、どのような順番でブランドを構築すべきなのでしょうか。
1.プロフィールの充実
社会保険労務士としてサービスを提供するという観点で考えた場合、経営者が依頼するポイントとしては「いくらでどのようなサービスなのか?」と「なぜこの社労士に頼まなければならないのか」という点です。プロフィールをなおざりにすると、単なる価格競争でしか比較されなくなります。
この、なぜ頼まなければならないのか、という「頼む理由」を裏付ける上で大切なプロフィールを充実させるべきです。
2.実績作り
最初は実績がありません。これは、誰しも同じラインからスタートしているものです。ここから、事務所経営を安定させるためには、公開できる実績と、培われるノウハウ、そして自身の成功体験を積まなければなりません。
そのためにも、採算度外視した受注や、無料相談などあらゆる手段を講じて、実績を作っていく必要があります。
3.紹介の仕組み
ブランド構築によって「口コミ」が生まれますので、逆説的に言えばブランド活動を実施しても「口コミ」が起こらなければブランドとしてのポジションが確立できていない、ということになります。
口コミと紹介は、定義は異なるものの、プロセスと結果は非常に近いので、紹介を起こす仕組みを構築するのもブランド構築のステップとしては有効です。
紹介の仕組みというのは、キックバックやあっせんということではなく、例えば「ホームページのお客様の声を活用する方法」や「採用時のお墨付き」「就業規則説明会」など、経営者との人間関係を構築する延長線上の活動で作ることができます。
4.露出・接触頻度
業務受注が増えてくると、露出や企業との接触頻度が減少していくものです。
あるタイミングで「増員」という選択肢を採らなければならない日が来るでしょう。
また、勉強会や講演会などで、露出しつつ権威となることもブランド構築では大切ファクターだといえます。
5.コミュニティ化
最後に、顧客の囲い込みをすることが必要です。
コミュニティを作ることで、そこがマーケット・ヘイブンとなります。
これは、熾烈な営業行為がひしめく市場とは別に、自分の事務所だけが営業することを許される場所のことで、アフターフォローをする代わりに「新たなサービス」や「サービスのアップセル」をすることができます。
また、現在ではさまざまなITツールも出ておりますので、それらを活用していく事で運用はそれほど困難なことではありません。
最後に
このコラムでは、ブランド構築について述べましたが、これだけで不十分なのは明白です。
ベースとして「どんなサービスを用意しているか」「そのサービスは導入企業に価値を与えるのか」を成しえていなければ、何の意味もありません。
ブランディングという耳障りの良い言葉に惑わされ、おかしなマーケティングを余儀なくされないためにも、自らの武器、事務所の武器を調えた上で、王道の手法でブランドを構築していきましょう。
ブランド・エクイティを感じることができた時、社会保険労務士としての誇りと尊厳は最大化し、自ずと事務所経営も当たり前のように安定しているはずです。
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